サザンオールスターズ/TSUNAMI レビュー

5.0
サザンオールスターズ

この記事では、24年間ファンを続けている私による、サザンオールスターズのシングル「TSUNAMI」のレビューをシェアします。

収録曲

  1. TSUNAMI (5:10) [作詞・作曲:桑田佳祐 / 編曲:サザンオールスターズ / 弦編曲:島健]
  2. 通りゃんせ (4:21) [作詞・作曲:桑田佳祐 / 編曲:サザンオールスターズ]

[01:TSUNAMI]レビュー

「TSUNAMI」は、歌舞伎町ライブを行った直後に作られました。

歌舞伎町ライブでは1985年(サザンがはじめて活動休止した年)以前のものを中心に選曲がなされました。こういった原点回帰色の強い曲が作られたのは、おそらくこのライブの影響が大きいと思われますが、こういうのは今まであまりやらなかったアプローチの仕方ですね。

「涙のキッス」や「真夏の果実」は小林武史色が強いですし、その後もバラードではスペクター&ビーチボーイズな「あなただけを」、クラプトン&ウエスト・コーストな「BLUE HEAVEN」など、サウンド面での新しい試みが続けられてきました。

しかしこの「TSUNAMI」からは、今までのバラードと違って「YaYa」や「いとしのエリー」「Oh!クラウディア」「涙のアベニュー」のような懐メロ臭を強く感じます。

これらの共通点は次のようなところにあるのではないでしょうか。それはピアノを中心に、メンバー等身大の生演奏で曲ができているというところです。桑田佳祐は基本的にミーハーで、今はまっている音楽の影響が創作活動に表れることがよくあります。それがこの時は、サザンオールスターズだったのではないでしょうか。

さて、一方でこの曲は、The Beatlesの『Abbey Road』を参考にして製作されていったんだそうです。参考といっても、それは音作りに関してでして、例えば、最初テレキャスだったギターを、『Abbey Road』で使われているような音が欲しくてレスポールに変更したとかそういうことです(ギターは全て桑田佳祐が弾いています)。

で、そうなると、ストリングスの大々的な導入は「Something」や「Carry That Weight」「The End」なんかからきたジョージ・マーティンなイメージなのでしょうか。私はそのストリングス全般が気に入っています。これは島健がアレンジして、金原ストリングスが演奏しているんですが、プロフェッショナルで素晴らしいと思います。

構成自体は単純な曲ですが、歌い出しがアカペラっていうのは珍しいですよね。歌と楽器が同時に始まるのは今までもありましたが、こういうのは意外に初めてなんじゃないでしょうか。ここでの生ピアノは、最初シンセピアノと重ねていたそうですね。

サビではボーカルを二重にしていますが、これは今までにはないザラついた雰囲気を作っていますね。ピアノの高音域の使いわけもいい感じです。私はこのサビの後半、「想い出はいつも雨」の部分が好きですね。突然演奏が静かになり、ブレイクしながら陰鬱なところへ引きずり込まれていく感じがたまらないです。あと余談ですが、サビ歌い出しの音取りには苦労したそうですね。最終的には機械(Pro Tools?)で補正したっぽいですが。

次に歌詞についてですが、これはThe Beach Boysの「駄目な僕」から発想を得たらしいですね。珍しく「僕」という一人称を使っていますが、元ネタはこれのようです。こういった暗い気持ちになるバラードは今までになかった感じですね。かなりの長期間に渡る売り上げ不振で、精神的に追いつめられていたのかも知れません。

「見つめ合うと素直にお喋りできない」という歌詞はすごいと思いました。特に、「お喋り」の「お」っていうのが、字足らずから無理矢理入れたんでしょうが、ものすごい発想ですよね。他にも、「止めど流る清か水よ」「消せど燃ゆる魔性の火よ」の韻の踏み方がいいですね。カモメと運命(さだめ)なんかでも韻を踏んでいます。ちなみに、タイトルの「TSUNAMI」という単語は海外でも通用する日本特有の表現でして、桑田佳祐はこういった日本情緒あふれる小ネタが大好きなのです。

それにしても、ドラムパターン、ベースライン、ピアノ、バッキングギター、ボーカル、ストリングス、歌詞、ミックス、全てにおいて作り込まれていますね。傑作だと思います。これだけマニアックにこねくり回した曲へ、ポピュラリティーを持たせ得たことがすごい。

あと、以下の通り、レコーディング日誌という公式サイトで過去公開されていたコンテンツがあります。TSUNAMIの制作過程が詳しく記載されており、とても読みごたえがあります。お薦めです。

「HOW WE LIVE IN SAS DAYS」

[02:通りゃんせ]レビュー

これは完全セルフプロデュース曲の第一段ですね。ベース、ドラム、ギター全部を桑田佳祐が演奏しているそうです。酔っ払った勢いで録音をしたのだとか。これに味を占めたのか、この後も「MUSIC TIGER」「波乗りジョニー」「白い恋人達」「踊ろよベイビー1962」と、ベースやドラム、キーボードを自分で演奏した曲は続いていきます。

イントロに使ってあるチベット僧の御経ですが、これはよくぞ思いついたって感じですね。とても格好いいです。でも、原由子の「一の通り通りゃんせ……」ってコーラスは失敗じゃないでしょうか。何というか、声質的にはまっていないんですよね。茅ヶ崎ライブでは原由子の声を更にいじっていましたが、やっぱり違和感は残ってました。

演奏については、ひたすらワウペダルを踏みまくっていますね。はしゃぎ回ってレコーディングしている姿が目に浮かびます。それから、ハイハットを全開にしてスネアを溜めまくる下手糞なドラム、この曲ではこれが最高のグルーヴを生み出していますね。「MUSIC TIGER」ではまだ普通に叩いていたので、これは意識してタメているんだと思います(酔っぱらっていただけかも知れませんが)。

ちなみに、最後に入ってくる弦楽器はアルハンブラっていいます。これは桑田佳祐がスペイン旅行で買ってきたお土産でして、スタジオミュージシャンの小倉博和が弾いていますね。最後の早送りした鳥の鳴き声も面白い。寺の情景が思い浮かびます。The Beatlesの「Blackbird」からのパロディでしょうか。とすると御経は「Tmorrow Never Knows」からのインスピレーションかも。あと、木魚も入ってますね。安易と取るかどうかは曲の完成度で変わりますが、桑田佳祐はよく、和風にすることによってオリジナリティを出そうとしています。

ボーカルは久々なシャウト系になっているんですが、何故か細く歌っています。曲調との兼ね合いを考えているのかも知れませんが、「Big Blonde Boy」辺りの歌い方をすれば細くなくても馴染むと思うんですけどね。サビ後半のハモリは格好いいです。

歌詞に関しては、この遊び感覚の強い曲には勿体ないくらいに格好よく仕上がっていますね。鎌倉の春夏秋冬を歌った世界観がいいです。横浜のガイドブックから歌詞を引用した「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」、その鎌倉バージョンといった感じでしょうか。ハードロックに古語の歌詞という意味では、近年の作品「CRY 哀 CRY」と同じ路線ですね。

なにより、「○の鳥居通りゃんせ」という発想にしびれました。これは手抜きで韻を踏んだようにもみえますが、結果的に鎌倉の四季という歌詞のコンセプトと合致して、すばらしい相乗効果を生んでいます。鳥居を潜るたびに目まぐるしく変わる鎌倉戦国時代の絶景が、ディストーションのかかったギターとともに迫ってくるという。。とても格好いい曲だと思うんで、是非ともサザンのリズム隊を交えて再録してみて欲しい曲ですね。

参加ミュージシャン

TSUNAMI

桑田佳祐:Vocal, Guitar
大森隆志:Guitar
関口和之:Bass
松田弘:Drums
原由子:Keyboards, Vocal
野沢秀行:Percussion
角谷仁宣:Computer Programming
金原千恵子ストリングス:Strings
藤田乙比古:Horn
大見川満:Horn

通りゃんせ

桑田佳祐:Vocal, Guitar
大森隆志:Guitar
関口和之:Bass
松田弘:Drums
原由子:Keyboards, Vocal
野沢秀行:Percussion
角谷仁宣:Computer Programming
小倉博和:Bandurria

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